不老部落

住所:
宜蘭県大同郷寒溪村華興巷46号

アクセス:
台鉄羅東駅からバスで寒溪バス停下車またはタクシーで寒溪派出所まで

URL:http://www.bulaubulau.com/

管理人のコメント:
 宜蘭県の羅東から30分ほどちょっと山の中に入ったところに「不老部落(プーラオ・ブールオ)」という名前の農場があります。このちょっと印象的な名前は、タイヤル族の言葉で、「ぶらぶらする」という意味だそうです。
 さて、ここは一日に30人限りの観光客を受け入れて、自然の中で自然とともに暮らしてきた泰雅(タイヤル)族の生活と文化、芸術の一端を見せてくれる場所。もっともプリミティブな「テーマパーク」を言えるかもしれません。山奥というほど山奥でもなく、標高も400mほどの里山といったところ。ここから朝の10時、麓のバス停・駐車場まで不老部落のスタッフがジープで迎えに来てくれます。そして、夕方の4時過ぎに、再び駐車場に送ってもらうまで、丸一日を部落で過ごします。

 映画のセットのような空間で、こころ温かなもてなし。そこに再現される自然とともに生きる暮らしと文化。かなり感動的な体験ができます。現代人が失ってしまった「大切なもの」を思い起こさせてくれます。大げさに言えば、ちょっとくらくらするような体験。もっともそれには、不老部落で供される「小米酒(粟酒)」がめちゃくちゃおいしくて、杯を重ねてしまったからかもしれません。

 台湾映画「賽德克·巴萊(セデック・バレ)」の一部の冒頭で、1930年頃、日本による台湾統治が山の中の台湾原住民の村に浸透するころの賽德(セデック)族の生活が再現されていました。今、不老部落で触れることのできるタイヤル族の伝統的な暮らしは、映画の中のセデック族の暮らしそのものでした。

 ぶらっと観光で行くには、ちょっとハードルが高いのですが、ちゃんと予約して準備していけば、必ずやすばらしい時間が過ごせることと思います。

【目次】
「不老部落」へ出発
罠(トラップ)の仕掛けを見る
「不老部落」に到着
部落の建物
フリー・タイム
生き物たち
小米酒造り
女たちの織物小屋
モダン・ハウス
木彫アトリエ
原住民料理
ショー・タイム
SAYONARA・再見


 「不老部落」へ出発
その日に「不老部落」に行く観光客は、朝の10時、指定の寒溪派出所前の駐車場に集合。1日に受け入れる人数は30人まで。私たちは6人のグループで予約したが、ほかの観光客と一緒に迎えのジープに分乗。

部落から大型ジープが迎えに下りてくる。迎えのスタッフは、二人とも裸足。今日一日の体験を予感させる。ジープは2台なので、先発組と後発組に分かれて、さあ、出発。

 
目的地の「不老部落」はこの「寒溪吊橋」 を渡った対岸の山中にある。吊り橋は歩行者専用なので、ジープは河原を走り浅瀬を渡る。

 
こんな感じ。川が増水したら、当然通行不能だ。

村へ行く途中のシイタケ栽培場。シーズンによってはここも見学コースになるようだ。6月末の今回は、車から見るだけ。
 

罠(トラップ)の仕掛けを見る 
ジープは山を登り、部落の手前で下車。若い男子のスタッフが待っていて、さっそく案内が始まる。

そこで見せてくれたのが、イノシシ狩り用の罠。木のしなりを利用して、罠にかかったイノシシを捕える。よく見ると獣道らしいところに、いくつも仕掛けてある。今でも実際に使っていて、ときどきかかるという。

彼は、ここでは一番若いスタッフだという。まだ10代。

朽ちかけたイノシシの頭骨。この部落は10年そこそこの歴史しかないが、ずっと昔から置かれていたように見える。
 

 「不老部落」に到着
部落に到着すると、大きな囲炉裏が切ってある集会所のような建物に案内された。

 
まずは、歓迎の豚肉の串焼きが出される。粟の酒粕漬け。これをセルフで炙っていただきます!楽しい一日になりそうな予感。
 

 部落の建物
 
部落には広場に面して、3棟の大きな建物が並んでいる。これは囲炉裏のある集会棟。右の小さな屋根は付属のかまどの屋根

これがそのかまど。レンガで組み上げられている。

これはダイニング棟。背負子に入っているのは粟。ここでは粟が主要な穀物だ。

これがキッチン棟。隣接してキッチン用のかまど小屋

これぞ正真正銘のオープンキッチン。素材はみんなここの農園か近在で採れたもので、無農薬有機栽培だという。

野菜類は、即売もしていた。

 
沢の水が引き込まれていた。

 
壁のない屋根だけのシンプルな構造。木材や竹、屋根の草ぶきまで、自然素材だけで組み上げられている。釘も使っていないように見えた。
 

フリー・タイム
第2陣が到着して、豚の串焼きを食べ終わるまでの間、しばしの自由時間。あちこち見て歩いたり、休憩したり、野菜を買ったり、思い思いに過ごす。
山羊の散歩か食事タイムか。

潘さん。「不老部落」を立ち上げた主宰者。もとは建築デザイナーだったというが、自然とともの生きるタイヤル族の暮らしを知って、ここに理想の農場を作り上げた。奥さんはタイヤル族出身。
 

 生き物たち
 
 
 
 

 小米酒(シャオミージョウ)造り
3っつの屋根は、手前からキッチン、キッチンのかまど、ダイニング。その奥に集会棟がある。屋根が同じ角度に傾斜しているのは、左側の沢から吹く上げてくる風を受け流すための昔ながらの知恵だという。

 
最年少A9君は、背負子と山刀を放さない。刀を抜くポーズを決めてもらう。

 広い敷地に生活棟を含めたくさんの建物が点在している。屋根に生えた緑が印象的だった。夏も涼しそう。

醸造小屋。2階建て構造の大きな建物。

粟から作る小米酒。粟のどぶろく。熟成に3か月ほどかかるという。この酒がめっぽううまい!台湾では各地で小米酒が作られ、瓶詰で売られてもいるが、酸っぱくで飲みづらいものが多い。ここのは酸味と甘みのバランスが絶妙で、すっきりとして後味がいい。私的には、台湾で飲んだ小米酒のなかでベストだ。
 

 女たちの織物小屋
農場内を案内されて、次の建物に向かう。
途中に見えたのが、鶏小屋と作業小屋。平場飼いの鶏がそこらへんで遊んでいる。鶏肉がおいしいはずだ。

見えてきたのが、斜面を利用して建てた高床式の機織り小屋。ここも壁無し。風が抜けて、見るからに涼しそうだ。

 板の間の中央に炉が切ってあるのかと思ったがそうではなく、風抜きのための吹き抜けのようだった。潘さんが建築家上がりだからなのか、タイヤル族伝統の建物なのか、「不老部落」の建物群には興味が尽きない。

ここで女性たちは伝統的な機織りに励んでいる。機織り箱を脚で押さえながら織るのは、全身を使うかなりの労働だと思う。それにプラスして、ひと目ずつ拾いながらヒを通す細かな作業。伝統的な機織りで織りあげられた布や帯は、即売もされている。

帯の捲き方を教わっている観光客。

おばあちゃんがかぶっている帽子も、もちろん手作り。

 
さっきまで外を歩き回っていた犬たちが、いつのまにか女性たちの隣りでお昼寝。

織りのことはよくわからないのだが、いくつかの種類の織り機があった。

織の設計図。原寸大でひと目ひと目埋めていく。昔はこの技術をどうやって継承してきたのだろうか。

小屋の片隅の風通しの良いところにゆりかごが置かれている。どこまでが生活でどこまでが演出なのかわからなくなっている。タイヤル族に伝わる、自然と溶け合った生活そのものに触れてもらう、という目的は、十分達成されている。

文明社会と背中合わせに、このような観光施設が成り立つところに、台湾の社会の柔軟さ、懐の深さを感じる。入場者を1日30人に限定しているのもうなづける。

 機織り小屋を裏の山から見下ろしたところ。ここは作業棟なので、構造も単純だ。
 

 モダン・ハウス
部落の真ん中に、モダンなゲストハウスが建っている。タイヤル族の伝統の知恵を現代に生かした建築。自然に溶け込んだ美しいデザイン。住み心地を試してみたくなる。
 

 木彫アトリエ
次に訪れたのは木彫のアトリエ。食器などの実用品からタイヤル族をモチーフにした彫刻作品までいろいろ。竹を編んだ籠類もいろいろあった。食器類などは食事の時に実際に使われていた。ここの作品は、みんな即売している。

台湾の原住民族は、蘭嶼(島)に住むタウ族を除いて、みんな山の民。台湾島中央部の山岳部のあちこちに住んでいて、木彫りや竹細工なのどに長じている。魅力的な作品も多い。

ナタとノミで、一本の木から原住民像を彫りだしていた。
 

 原住民料理
ひと通り部落を案内してもらって、再び元の建物に戻ってくると、ダイニングに食事の準備が整っていた。

 
さっそく、小米酒(シャオミージョウ)で乾杯。食事タイムのスタート。

食事のメニューは季節によって異なる。ベジタリアンには素食メニューも用意されている。おつまみは塩茹での落花生。採れたての塩茹で落花生は、どこで食べてもおいしい。

さっき木彫アトリエで見てきた手作りの皿やカトラリーが次々に登場。

マスの塩焼きと粟餅。宜蘭は水がきれいなところで、台湾のほかの地域と違って、水道水もおいしく飲める。豊富な地下水を使って淡水魚の養殖も盛ん。

こちらは、上のメニューの素食版。茹でた野菜やパッションフルーツ。

宜蘭には、海と山と平野があって、食材が豊富だ。おいしい個性的なラストランもたくさんあって、各地から食べに来る人も多い。タケノコの上にのっているのは、トビコ。

メインディッシュの豚のリブ肉。これは外のかまどで、炭火焼き。メインは、豚か鶏かを選ぶことができた。

こちらは、鶏のほう。名前はわからないが、野鳥の丸焼きと付きあわせのサラダ

メインディッシュの素食版。カボチャの中に穀物や豆類がいっぱい入った炊き込みご飯。これもおいしかった。
 

 ショー・タイム
食事が一段落すると、いろいろと案内してくれたスタッフがギターを抱えて登場。ショータイムの始まり。

食事の準備も一段落して、キッチンにいたスタッフも続々集まって、歌や踊りに参加。

タイヤル族に伝わる歌や踊り、口琴などの楽器も披露してくれる。

デザートのケーキは、客の中にいたカップルが結婚式のように入刀。一つの杯から2人で乾杯する、タイヤル族式(?)乾杯も、大いに受ける。

タイヤル族の手しぐさ歌(?)というのかな。簡単な手しぐさを教わって、みんなで歌って大いに盛り上がる。タイヤル族の一員になったように、スタッフも客人も和気あいあいの雰囲気。

冷えた小米酒は、ちょっと甘くて酸味があって、のど越しがよく、いくらでも飲める。タイヤル式か乾杯があちらでも、こちらでも…

楽しそうに盛り上がる客人を様子を、これまた楽しそうに見守る潘さん夫妻(右)。お世話になりました。謝謝!
 

 SAYONARA、再見
締めは、外の炉に掛けた大鍋で煮ていた筍スープ。これから山を下だり、遠路帰るので酔いを醒まさないとね。

 
最後にキッチンのスタッフが勢ぞろい。不老部落には全部で30人近いスタッフがいるという。

再び、ジープに乗せてもらって、麓の川向こうにある駐車場まで送ってもらう。朝の10時から6時間ほどの滞在だが、まったく異次元の体験に、時間が経つのを感じない。

懐かしさと優しさに満ちた「不老部落」ともお別れ。

麓の待ち合わせ場所の目印は「寒溪派出所」。その壁面にタイヤル族の少年少女のイラストが大きく書かれていた。ちょっと色褪せてたけど。



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